策略

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FUJIFILM X100T







仕事を終えて家に帰り早々に着替えを済ませた僕は、壁とテーブルとの隙間が55センチしかない名ばかりの上座へと腰を下ろす。







「パパは、来週の水曜日まで何もしなくていいよ。全部、私がするから、どうぞ座ってて。」







どんぶりほどの茶碗に、器用にご飯をよそって娘が持ってきてくれる。突然の王様対応に、「なんで?」と軽く訊いてみた。10月に誕生日があって、そのときに王様になったばかりだというのに、今月2回目のスペシャルな待遇に背中がムズムズと痒くなった。







「ハロウィンだからだよ。」







ハロウィンって、そんなイベントやったっけかなと、娘が持ってきたおでんの大根に辛子を多めに塗りたくった。







「おでんやったら、チューハイとか呑みたくなるわー」







独り言を天に向かって呟くと、ハイハイどうぞとチューハイを持ってくる娘。「欲しいものあったら、言ってね。私が全部取ってくるから。」プルトップを上げて一口啜り、大根をかぶり付く僕の横顔をニコニコしながら観ている。熱いおでんと冷えたチューハイが、胃に染みる。







「神か。」







僕は単純に、そう思った。










娘が寝てから、机の上に一枚のプリントがクリアファイルに挟まれているのを見つけた。







「かぞくのしごとをしらべましょう」とタイトルがある。







項目に、「そうじ」「せんたく  ようふくのせいり」「じょくじのしたく かたづけ」「おふろをわかす」「かいもの」「いえのしゅうり」「ごみすて」なんてあって、いつもしていると赤、ときどきなら青、何度かするなら緑、しないと黄色の色を塗るらしい。「わたし」の欄と「おかあさん」の欄と最後に「おとうさん」の欄というのがあって、私の欄には「ごみすて」が黄色で塗っている以外、すべて赤か青か緑で塗られていた。







宿題で提出日が、来週の水曜日だと書いてある。







僕は「王様」になったのではなくて、おとうさんの欄をすべて黄色で塗りつぶそうという娘の仕掛けたトラップだと気づき、酔いから一気に現実に引き戻され、こたつに首まで入っているというのに訳が分からずブルブル震えた。



















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by saibara31 | 2016-10-28 20:22 | あなた天使ちゃん

FUJIFILM X100T で撮った写真ブログ&兵庫及びその周辺まち歩きと、デミオ15MBで行くドライブ日記。  * このページはリンクフリーです。


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