カテゴリ:女流棋士への道( 39 )

23手目

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プロ棋士の対局を観たあと、1手目から娘と一緒に”あーでもないこーでもない”と石を並べてみる。








「もう辞めたいねん」








あれだけ行くのを渋っていた”書写”の習い事では、いつしか全国書写コンクールで「銀賞」をもらうほどになっていた。








「ちょっと、キッツイねん」








クラスが上がるごとにレベルも上がるスイミングの習い事だって、最近少しウンザリ気味の様子だった。今回から始まった”25mクロール・タイムトライアル”で、クラス上位だったらしく、この日はニコニコしながら帰ってきた。








「本気出したったわ」








水に濡れたピンクのゴーグルで、娘の本気度がよく伝わった。








「で、囲碁は?」








「楽しいで」








23手目。








少しだけ考えて、一番厳しい手をそっと置く。



















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by saibara31 | 2017-05-24 20:34 | 女流棋士への道 | Comments(4)

クロとシロ

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ゴールデンウイーク最初の日曜日と最後の日曜日は、囲碁教室の日。









いつのまにか「囲碁」って漢字で書けるようになっていた。









学校の宿題である”ゴールデンウイークの思い出”日記の、2話目が「囲碁」だから。






















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by saibara31 | 2017-05-07 21:21 | 女流棋士への道 | Comments(0)

最強の手

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「宿題出してくださいって、先生に言おうとしたけどやめたわ」








枝豆のスナック菓子をつまみに、オロナミンCの茶色い瓶をくわえた娘が、囲碁教室での出来事を教えてくれる。








「なんでやめたん。宿題出してもらったらエエのに」








「いや、出して言うたらホンマに宿題出しそうやもん。あの先生のことやから」








スナック菓子がポロポロとテーブルに落ちるのを、手で払い知らぬ顔でそっとスカートの裾を摘まむ。








「プレゼントやって先生がくれたのん見たら、詰碁の本やってんで。結局、宿題やん。見てよー」








口を尖らせ囲碁用のカバンの中から、オレンジ色の本を取り出してくる。黒から打って白石を殺す詰碁の問題集のようだ。パラパラとページをめくってみると、文句をいうわりに何問かの問題に、赤と青の色鉛筆で解いていて笑った。








「先生、最強やわ」








小さな声で呟いてオロナミンCをグビッと飲み干し、「囲碁打とうか」と僕に言って立ち上がった。
















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by saibara31 | 2017-04-13 20:33 | 女流棋士への道 | Comments(2)

僕が向かうべき場所

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朝からノートパソコンの画面を観ている僕の肩口へ、身体をピタッとくっつけて覗いてくる。ネットで碁を打っている僕の手を、じっと横から観ているのだ。








「パパは白石?」








囲碁教室へ通うようになってもうすぐ一年。さすがに”石”の事を「タマ」と呼ぶ事はなくなった。地を稼ぎにいって、相手に付けられたところで僕はカーソルを動かしアテ込んでゆく。








「こっちからアテなあかんやん。パパは石の方向が間違ってるねん。こっちに味方の石があるねんから、こう置くのが筋やのに。こうで、こうなって、こうなるやろ?」








先日娘と対局したときに、今まで打たなかった打ち込む手に成長を感じたばかり。とても囲碁一年生とは思えぬ「石の方向」なんて生意気なアドバイスに、この数手先で僕は静かに投了した。




















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by saibara31 | 2017-02-26 21:00 | 女流棋士への道 | Comments(2)

果てしなく遠く険しい道

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「パパ、久しぶりに囲碁打とうよ。」








宿題も早々に終え、公文の書写から帰ってきた娘の機嫌が気持ち悪いくらい良かった。お習字を習っているのは、プロ棋士になって扇子に筆でサインしないといけないからだと言っていた。娘にとって、とても理にかなった習い事というわけだ。








「宿題の本読みしたろか?」








お風呂に入る前に、本読みを僕に聞かせてくれるという。こくごの教科書を両手で持って、どこかのショッピングモールの場内アナウンスみたいな途切れ途切れの癖のあるアクセントでサラサラと読みあげる。文章の語尾が面白く吊り上がっているのが特徴だ。小学校4年生になったら、放送部に入って「お昼の放送」を担当したいのだと言っていた。








プロの囲碁棋士になった時に、対局者の前に座って「黒 17の四、右上隅小目」とかスラスラと言いたいからという理由らしい。








プロ棋士になって、”記録係”の読み上げがやりたいという娘の夢のような高みに、来月から囲碁教室の月謝が上がる。
















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by saibara31 | 2017-02-22 19:53 | 女流棋士への道 | Comments(0)

囲碁の時間

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「イゴって何? って友達から言われるねん。どうやって言えばいい?」







そう言って、コンソメ味のポテトチップスをサクっといわせる。確かに、囲碁を一言で説明するのはとても難しいなと、僕も横からポテトチップスの袋に手を伸ばした。塩味と違ってコンソメ味は、一度伸ばした手が止まらなくなる。娘と交互に袋へと競うように手をいれる。あっという間に空になった。







娘が4才の時に、僕が昔使っていたポータブルゲーム機を持たせた。そこには、囲碁のソフトしか入ってなくて、ゲーム機が使えるというのが面白かったのか、訳もわからず暇さえあれば電源を入れて遊んでいた。5才になると、石の取り方をそのゲームで覚えていた。当時は石という言い方も知らない娘は、それを「タマ」と呼んでいた。







「タマ取ったったで」








周りで見ている大人たちは、娘がヤバいゲームをしていると思ったことだろう。







「マジで?」







5才の終わりごろには、そのゲームの対局で勝ちだした。「WIN」の文字とともに流れる聞き覚えのある効果音が流れた時は、正直びっくりした。ロクにルールも教えていないのに。そして、6才になって本格的に囲碁教室に通いだし現在に至っている。







「学校の先生に言って、道徳の時間を囲碁の時間にしてもらいんか」







また、僕の口から無責任なコトダマが飛び出していった。


















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by saibara31 | 2017-01-26 21:58 | 女流棋士への道 | Comments(2)

柔らかさの差

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「毎日、囲碁の勉強してるから、言っておくけどパパだいぶ強くなってるで」







冷えた空気が充満する部屋で、漢字の書き取りの宿題をしている娘をこたつで丸くなりながらチラリチラリと見る。久しぶりに自分から、宿題が終わったら囲碁を打とうと誘ってきた。平日は宿題に追われて、なかなか盤を囲む時間が持てないのが現状なのだ。娘は久しぶりの対局で、僕は毎日囲碁づくしなものだから、その差は歴然で遙かにかけ離れているものだろうと思った。







「私が黒石でいい?」







「どうぞ」







白石がギシリと詰まった碁笥(ごけ)を自分の前に引き寄せて、蓋をあけて盤の横に置いた。







「そこに、打つと思ったわ」







娘の初手は、いつも同じ。奇をてらうことをしない。だから、6手目の僕の打つ場所も、同じ場所にカカリを打つことになる。それを見計らって、僕を牽制して言ってくる。僕が騙すために打つ手にも、全然乗ってこない。逆に、こちらが関心する手を用意しているのだ。







「それ、いい手やな。何処でそんな手覚えたん?」







「囲碁教室で、先生に教えてもらった手やで」







「ふーん」







最初、自分がいいと思っていた形勢が、だんだん怪しくなってきた。終わってみれば、僕が3目差で負けていた。







「も一回やろうか」







「私の囲碁のノート見せてよ」







娘から預かった囲碁用の方眼ノートを僕の鞄から取り出して、ペラペラとページをめくる。一ページ目に、謝依旻(しぇい・いみん)さんの対局の棋譜を僕が書いているだけで、あとは白紙のままだ。








「強い手を見つけたら書いててくれる言ってたやん。パパ毎日、囲碁観てて、何やってるん?」







「すみません」







暇だからと安請け合いしてノートを預かったが、宿題なんかしたことが無い僕には少し荷が重く、盤上の白石を集めながら胃の裏の方がズンと熱くなった。















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by saibara31 | 2017-01-24 21:17 | 女流棋士への道 | Comments(2)

家族の時間

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夕食を終えると、娘の学校で出された宿題に付き合う。算数は計算カード、国語は漢字の書き取りと、本読み3回。僕が仕事から帰ってくる前から、少しずつでもやっていた形跡があるのに、宿題を終わらせるのに19時半頃までかかった。







それが終わると、娘が大好きなふたり 謝依旻(しぇいいみん)女流名人と、張栩九段の棋譜を囲碁盤に並べだしている。僕はその横で、新しく産まれたばかりの「たまごっち」の世話をする。すぐにお腹は空くし、5分おきにウンチばかりしてる産まれたばかりの女の子にすこしうんざりしてきた。学校が忙しすぎて、「たまごっち」のお世話も出来てないのだろう。その証拠に、愛情メーターがほとんどゼロの状態だ。







「お風呂入ろうよ」







手元に白石と黒石をバラバラにひとかたまりにして、棋譜の番号を確認して一手一手カチリと音をさせて丁寧に置いている。僕の問いかけには、サラリと無視で受け流す。







「じゃぁさぁ、パパ、37手目から、次ココとか言ってよ」







盤上は、まだまだ序盤戦すぎて、遠くにあるゴールが見えずに少し目眩がした。








75手まで手伝って、もう一度娘をお風呂に誘う。







「じゃぁ、お風呂あがったら囲碁うとうよ」







ハイハイと返事をしたものの、お風呂からあがった時には20時半になろうかという時間。パタパタと時間割の確認をして、歯ブラシを咥えた娘の長い髪の毛もパタパタとドライヤーでとかす。







「もう、寝る時間やから、囲碁は明日うとか」







「えー」







とは言うものの、お気に入りの枕を胸元に抱えていて寝る準備はできている。







「囲碁打つ時間無いから、明日から学校の宿題なんかしなくてええで」という言葉が喉の先まで出てきて、”EX Plus”と如何にも効きそうな文字の書かれたビタミン剤2錠でソロリと一気に呑み込んだ。

















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by saibara31 | 2017-01-12 21:09 | 女流棋士への道 | Comments(0)

チリモツモレバ

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僕が夕食を終えると、こたつの横に囲碁盤がセットされていた。







ハンデ無しで僕に勝ったら、千円あげる約束を娘と先日したばかり。盤上に1子置くハンディごとに100円づつ減らそうと提案する。8子局で勝てば100円が手に入るといったシステムを娘も呑んだ。7子なら200円、6子なら300円といった具合に。ただし、途中で形勢が悪くなってコタツに頭から潜りこんだら、逆に100円貰うからなと釘を刺しておいた。







「今日は、8子置いていい?」







初戦になるこの日は、星に8個の黒石を並べての対局となった。地に辛い僕と、厚みで勝負しようとする娘との戦い。







「あげるところはあげる。許してくださいと言ってきたら許す」







そういうゆるい碁を打ってくる。狙いもはっきりしないボンヤリとした手。その手に僕は手抜きをして、他に着手している内、後にだんだんと効かされていた。







終局まで打ち切って整地をしてみると、8目ほど僕が負けていてきっちりと100円を巻き上げられた。







今晩も、ご飯を食べ終えた娘がせっせと囲碁盤をセットして、僕が食事を終えるのを今か今かと待っている。

















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by saibara31 | 2016-12-30 21:18 | 女流棋士への道 | Comments(2)

騙す手

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年が明けて1月1日になると、僕のタブレットで月に20ギガバイトまで使えることになっている。







「囲碁のYouTube見放題になるから、たくさん勉強してよ」







定石の置き方を覚えるように囲碁の先生に言われているらしいが、轢かれたレールの上を歩くような行き方を嫌う娘は少し嫌気がさしている。







「囲碁なんか、自分の好きなとこに自由に置けばええんやからな。定石なんか気にせんでええよ」







算数のように、答えが一つしかない自由のない教科が嫌いらしい。







「パパに囲碁で勝てたら、千円あげるわ」







僕も、暇さえあれば囲碁の対局に、囲碁教室のYouTubeを観て勉強してるのだ。最近は、常識にとらわれない碁を打つプロ棋士を好んで観ているうちに、少しだけ強くなったような気がする。お金で釣るのはどうかと思うのだけれども、娘のやる気スイッチがONになればいいやと言ってみた。







「ママはさぁ、お手伝い10個したら、二千円くれるって言ってたよ」







囲碁を打つ前から、僕は娘に負けている。















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by saibara31 | 2016-12-28 21:05 | 女流棋士への道 | Comments(0)

FUJIFILM X100T で撮った写真ブログ&兵庫及びその周辺まち歩きと、デミオ15MBで行くドライブ日記。 (2015年3月19日以降のブログの写真から Fujifilm X100Tで撮っています。2017年4月2日以降のクルマは マツダ 15MBデミオ ”DJLFS”です。) * このページはリンクフリーです。


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