FUJIFILM X100T
「飛行機の写真撮りに行ってもいいかなぁ」
「えー。何分くらい付き合ったらいいの?」
またか面倒臭いなぁという顔で、胸の前で偉そうに腕を組む娘。
「30分くらいかなぁ」
「じゃぁ、15分にしてよ」
「そんなん、飛行機が飛んで行くかわからんやん」
20分100円という“伊丹スカイパーク『南』駐車場”へ、僕はするすると車を入れた。遊具で遊ぶ家族連れなら、北側の駐車場の方が相当便利なものだから、こちらの駐車スペースは案外空いている。
「え? 遊ぶとこあるの?」
石造りの壁と有刺鉄線の塀で囲われた道。半信半疑のまま、僕の後ろをボソボソとついてくる。滑走路に平行している縦長の公園なので、遥か向こう側に遊具らしき赤色の塗装がちらりと見える。僕はゆっくり大股で歩き、娘は小走りで建造物を目指す。
「駐車場はタダなん?」
僕の後ろで寒さに縮こまってる妻が、ポケットに手を突っ込み声を絞り出す。
「タダちゃうで」
身体全体で振り返り、そう答えてぐるりと一周した。マチナカはどこへ行っても、クルマを止めると有料だ。昼間食べたラーメン屋さんですら、駐車券サービスを受けているというのに100円払ったじゃないか。
「ほしたら、あっちの近い駐車場に止めんかいな」
妻が言うことはいつだって正論だ。ごもっともな意見はわかるのだけれど、それではロマンの欠片も感じないではないか。僕は飛行機とクルマのツーショット写真が撮りたいだけなのだ。
「早よしーな」
「早よせんかいな」
「駐車場代もったいないでー」
遊具で散々遊び散らかし、駐車場へと戻ったのは小一時間後だった。
そして僕が「写真を撮るわ」となると、いつだってこういう仕打ちが待っている。
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