FUJIFILM X100T
算数の計算カードと、国語の本読みは、毎日あるベースになる宿題で、これに加えて漢字の書きとりや、算数のドリルなどがその都度付け加えられている。公文に娘を迎えに行って、家に帰ると妻特製「キノコづくし」の料理が並べられていた。
「ご飯食べたら、宿題しーよ」
オレンジ色に光る保温のボタンを見て、僕は反射的に炊飯器の「切」のボタンを押した。
「ご飯炊けたら、すぐ切らんかいな」
時代がいくら進歩しても、温められている行為そのものに信用が置けない。「冷ご飯食っとれ」と、僕に菜箸を向けた妻が冷たく言う。
2等辺三角形のカタチで僕らは座り、僕と妻が向かい合う。おかずのお皿が底辺に沿って均等に3つ並んでいる。トマトとキュウリのサラダ、キノコのオムレツ、キノコとキャベツと豚肉のチンジャオロース風。僕は一番手前にある皿から、豚肉だけを選んでご飯の上に乗せた。娘は輪切りにされたトマトに齧りついて、口の中に出来た口内炎が滲みると騒いでいる。
「本読み聞いてくれる?」
食後に、タブレットを覗いていた僕に娘が言ってくる。つい先日は、童謡の歌の歌詞だったりしたっけ。今日は、早口言葉になっていた。
「生麦 生米 生卵」
「イェー」
「生麦 生米 生卵」
「イェーーィ」
「パパ、変な相槌入れるのやめてくれる?」
読んでいた本をパタリと倒して、僕に睨みを利かせる。
「かえるぴょこぴょこ3ぴょこぴょこ」
「イェー」
「あわせてぴょこぴょこ6ぴょこぴょこ」
「イェーーィ」
「コラーぁ」
「だって~」と口を尖らせ、ダンスを加えてやってみせた。ドリフの早口言葉世代だから仕方がない。動画サイトで、そのシーンを引っ張りだし、志村けん氏をリスペクトしている娘に見せると大ウケしていた。
「明日、学校でやったらアカンで」
一部始終を見ていた妻が、呆れた顔で僕らに向かって言い放つが、きっと娘のクラスだけで流行るに違いないとニタニタしてしまった。
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