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柔らかさの差

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FUJIFILM X100T







「毎日、囲碁の勉強してるから、言っておくけどパパだいぶ強くなってるで」







冷えた空気が充満する部屋で、漢字の書き取りの宿題をしている娘をこたつで丸くなりながらチラリチラリと見る。久しぶりに自分から、宿題が終わったら囲碁を打とうと誘ってきた。平日は宿題に追われて、なかなか盤を囲む時間が持てないのが現状なのだ。娘は久しぶりの対局で、僕は毎日囲碁づくしなものだから、その差は歴然で遙かにかけ離れているものだろうと思った。







「私が黒石でいい?」







「どうぞ」







白石がギシリと詰まった碁笥(ごけ)を自分の前に引き寄せて、蓋をあけて盤の横に置いた。







「そこに、打つと思ったわ」







娘の初手は、いつも同じ。奇をてらうことをしない。だから、6手目の僕の打つ場所も、同じ場所にカカリを打つことになる。それを見計らって、僕を牽制して言ってくる。僕が騙すために打つ手にも、全然乗ってこない。逆に、こちらが関心する手を用意しているのだ。







「それ、いい手やな。何処でそんな手覚えたん?」







「囲碁教室で、先生に教えてもらった手やで」







「ふーん」







最初、自分がいいと思っていた形勢が、だんだん怪しくなってきた。終わってみれば、僕が3目差で負けていた。







「も一回やろうか」







「私の囲碁のノート見せてよ」







娘から預かった囲碁用の方眼ノートを僕の鞄から取り出して、ペラペラとページをめくる。一ページ目に、謝依旻(しぇい・いみん)さんの対局の棋譜を僕が書いているだけで、あとは白紙のままだ。








「強い手を見つけたら書いててくれる言ってたやん。パパ毎日、囲碁観てて、何やってるん?」







「すみません」







暇だからと安請け合いしてノートを預かったが、宿題なんかしたことが無い僕には少し荷が重く、盤上の白石を集めながら胃の裏の方がズンと熱くなった。















by saibara31 | 2017-01-24 21:17 | 女流棋士への道

FUJIFILM X100T で撮った写真ブログ&兵庫及びその周辺まち歩きと、デミオ15MBで行くドライブ日記。  * このページはリンクフリーです。


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